KDDIが次世代DMPで目指す グループを横断した「データ活用の民主化」

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※本記事の内容は2026年8月の取材時点、所属部署名は2026年10月時点のものです。

2024年からKDDIグループで本格運用が始まった次世代DMP。AI時代の持続的な成長に向けてKDDIが当時掲げていた「サテライトグロース戦略」を支えるために構築されたこの新たなデータ基盤は、通信、金融、ライフデザインサービスといった事業ごとにサイロ化したさまざまなデータをシームレスに連携することで、グループを横断したシナジーを生み出し、新たなビジネス価値を創出する基盤として大きな期待がかけられています。本記事では、次世代DMPの開発プロジェクトをリードしたKDDI株式会社パーソナル事業統括本部 システム開発本部の久保達也氏とARISE analyticsからプロジェクトに参画した田畑幹に、プロジェクトの経緯と今後の展望について話を聞きました。

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    久保 達也 氏

    KDDI株式会社

    パーソナル事業統括本部
    システム開発本部
    AI・データプラットフォーム部
    データアーキテクトグループ グループリーダー

(ARISE analyticsからの参加者)

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    田畑 幹

    株式会社ARISE analytics

    Data&AIプラットフォーム推進本部
    Data&AIプラットフォーム推進部 部長

データシェアリングでグループ横断のデータ連携を実現

――まず、次世代DMPの開発プロジェクトが立ち上がった背景についてお聞かせください。

久保氏 私の所属するパーソナル事業統括本部のデータマネジメントグループは、KDDIグループ全体でデータを利活用するための共通基盤の開発・運用を担っています。グループ内のデータ連携とコラボレーション、最近では生成AIを活用した新たなシステムアーキテクチャの構築もミッションとなっています。次世代DMPは、いわばその根幹となるデータ基盤です。各事業部門、グループ会社ごとにサイロ化したデータを統合し、すべての現場が顧客情報の一元的な把握やマーケティング分析などに活用できる環境づくりを目指しています。

この背景には、KDDIが2022年に発表した中期経営戦略「サテライトグロース戦略(2022-2025年度)」がありました。通信を中心に金融、エネルギー、DX、ライフデザインサービスといった主要な事業領域を連携させ、シナジーを生み出しながら持続的な成長を実現するための構想です。この中でマーケティング施策の高度化やARPU(1ユーザーあたりの平均収益)の向上を実現するためのデータ基盤として、次世代DMPの開発プロジェクトが立ち上がりました。

――次世代DMPのプロジェクトでARISE analyticsに支援を依頼した経緯についても教えてください。

久保氏 ARISE analyticsは、次世代DMPの前身の基盤の開発から保守運用までを支援いただいた実績があり、KDDIのデータ基盤については深くご理解いただいています。また、次世代DMPでは各事業部門が運用しているデータ基盤をコピーすることなくSnowflake上で共有し、必要に応じて相互に参照できるデータシェアリングの仕組みも一部採用しています。こうした最新のアーキテクチャの観点でも、ARISE analyticsの知見には大きな期待を感じていました。実際、ARISE analyticsからは次世代DMPが完成した後の継続的な拡張も踏まえて、アジャイル開発の手法を取り入れたさまざまなご提案をいただきました。

田畑 データシェアリングの仕組みを取り入れた基盤構築は、今後のトレンドになるとも言われていて、このプロジェクトのお話をいただいたときは個人的にもぜひやってみたいと思いました。Snowflakeの最新機能を活用したデータ基盤という点でも、とても魅力的なプロジェクトでした。

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KDDI株式会社 久保 達也 氏

――次世代DMPによって、どのようなことが可能になるのでしょうか。

久保氏 これまで他の事業部門のデータを利用する際は、その都度複数の基盤からデータをコピーしなければならず、その工数やコストが大きな課題となっていました。また、通信事業は総務省、金融事業は金融庁の管轄であり、そこでは異なるルールやセキュリティ基準に基づいてデータが管理されています。同じグループ内であっても、他の事業部門や別会社とのデータの受け渡しには、お客さまの許諾を含めた合意形成が必要です。さらに、データ基盤を構成する技術も異なるため、個別に仕様を確認しながら連携する必要がありました。

次世代DMPでは、こうした組織、システム、工数、コストの壁をできるだけ取り払うことで、新たなビジネス価値を創出する「データ活用の民主化」を目指しています。ユーザー自身が必要なデータをすぐに取り出し、多様な角度からお客さまを理解した上で、個々のお客さまに最適化された提案やマーケティング施策につなげられる環境をつくりたいと考えています。

――実際に次世代DMPは現場でどのように活用されているのですか。

久保氏 次世代DMPはSnowflakeを基盤に構築されており、Webインタフェース上でデータの加工や分析ができるようになっています。SQLを扱えるアナリストであれば、自らデータにアクセスして分析することが可能です。また、BIツールのTableau Cloudとも連携し、経営層向けなどさまざまな用途のダッシュボードを全社に公開しています。ダッシュボード上では1つの基盤にデータが集約されているように見えますが、裏側では各基盤のデータを参照し、論理的に統合されています。

また、これは取り組みの途上ではありますが、グループ会社との連携も進めています。グループ会社や国内外のパートナー企業とのデータシェアリングも実現していきたいと考えています。

田畑 マーケティング施策の高度化につながる仕組みづくりも進めています。例えば、お客さまにメールやSMS、アプリで情報を配信するMA(マーケティングオートメーション)基盤と連携し、さまざまなデータを組み合わせることで、お客さまに最適なメッセージを届けるユースケースを実現しています。この他にも、次世代DMPはKDDIさま社内の営業DXにも活用されています。営業の現場で使われるシステムに次世代DMPのデータを用いたTableauのダッシュボードを組み込み、日々の営業活動に役立てています。

久保氏 用途に応じて統合されたデータであれば、インフラの担当部門が対応することなく、現場のユーザーがすぐに活用できます。複数のサービスの利用状況をもとにマーケティング施策のターゲットとなるお客さまを絞り込むなど、従来は難しかったセグメントや迅速な施策の実施が可能になりました。

田畑 2022年に施行された改正個人情報保護法では、単体では個人を特定できない「仮名加工情報」の利用ルールが整備されました。次世代DMPはこうした法改正にも対応し、安全性を確保しながら、従来よりも柔軟にお客さまのデータを利活用できるようになっています。

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株式会社ARISE analytics 田畑 幹

チームが一体となって同じ目線でプロジェクトを共有

――次世代DMPの開発はどのように進めていったのでしょうか。

久保氏 ARISE analyticsには、次世代DMPの前身の基盤開発から携わっていただいていますが、開発のスタイルは従来から大きく変わりました。今回はアジャイル開発の手法を採用し、これまでARISE analyticsに委託していたシステム開発にもKDDIのメンバーが加わりました。小さく始めて、データの量や範囲を段階的に拡張しながら基盤を進化させていくという私たちの方針に対し、ARISE analyticsは最適な体制を提案してくれました。

田畑 これまではKDDIさまがプロダクトオーナーの役割を担い、ARISE analyticsは開発プロジェクトをマネジメントするという分業体制でした。次世代DMPプロジェクトでは、プロダクトオーナーの役割の一部を私たちが担う一方、スクラムマスターや開発の実務にもKDDIの皆さまに入っていただきました。これにより役割の線引きをなくし、全員が1つのチームとして開発に取り組むことができました。

久保氏 常に同じ目線でプロジェクトを共有できたので、非常に進めやすかったです。役割が分かれていると、開発の背景などをその都度説明する必要があり、コミュニケーションコストが高くなります。今回は少数精鋭のチームで常に認識を共有していたので、コミュニケーションがスムーズで、意思決定もスピーディーに行えました。

――ARISE analyticsとして、提案や設計で工夫した点を教えてください。

田畑 開発面では、IaC※2によるSnowflakeの各種設定のコード化や、機能改修や機能追加を継続的にテスト・リリースできる CI/CD※3環境の構築など、個々の機能開発をできる限り自動化し、スピーディーに開発を進められる仕組みを整えました。

また、グループ内の多様なシステム、データを連携する中で、共通化できる部分を見極めて設計しました。これまでの開発経験を生かし、システムごとに異なる部分は変数として切り出し、それ以外を共通化することで構成をシンプルにし、開発を効率化しています。

こうした取り組みにより、これまでは長時間かかっていた処理を大幅に短縮できたケースもあります。運用の中で新しい機能やデータマートをアジャイルに追加し、継続的に基盤を進化させるのが本基盤の考え方です。

――KDDIとして、今回のARISE analyticsの支援をどのように評価していますか。

久保氏 非常にタイトなスケジュールの中で、私たちと同じスピード感で開発に取り組んでもらえました。立ち上げ時から素早くチームを編成できたのも、ARISE analyticsだったからだと思います。最近はデータ領域の専門人材の確保がますます難しくなっています。そうした中で、最初から高い当事者意識を持ってプロジェクトに入ってもらい、一緒に考えながら開発を進められたのは大変心強かったです。現在も本基盤の状況を踏まえて、ARISE analyticsから継続的に提案をいただいています。

AIの活用でさらなるデータ活用の民主化を促進

――今後は、どのような領域に取り組んでいきたいとお考えですか。

久保氏 データ分析の専門家に代わって、現場のユーザーをサポートできるAIの機能を提供していきたいと考えています。現在のTableauのダッシュボードでは、あらかじめ用意された切り口でデータを見ることが中心ですが、実際に施策を検討する段階でユーザーが見たいデータや切り口は多岐にわたります。必要なデータを自然言語で抽出し、AIと対話しながら分析や施策の立案までできる環境を目指しています。

その実現に向けて議論しているのが、AI時代を見据えたデータ活用基盤への進化です。単に基盤の上にAIを乗せるだけでなく、AIがデータを正しく理解し、有効な示唆を出せるよう、一定のロジックやルールを組み込む必要があります。

田畑 データの利活用だけでなく、開発や保守運用にもAI活用を広げていきたいと考えています。これまでも開発の自動化は進めてきましたが、AIによってさらにパラダイムシフトが進むと感じています。一方、これは従来の取り組みの延長線上でもあります。基盤の構成や開発プロセスをコードで管理してきたからこそ、AIを活用しやすい部分もあります。積み上げてきた仕組みを生かしながら、AIによって開発や保守運用をさらに効率化して、次世代DMPの価値向上、データ活用の民主化に貢献していきたいと考えています。

※2 IaC(Infrastructure as Code):サーバー、ネットワーク、セキュリティといったインフラの構築や運用管理をコードを用いて自動化する手法

※3 CI/CD:ソフトウェア開発におけるCI(継続的インテグレーション)、CD(継続的デリバリー )のプロセスを自動化し、開発者やチーム全体の生産性を向上する仕組み

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KDDI株式会社

事業内容
電気通信事業
従業員数
73,198名(連結ベース、2026年3月31日現在)
住所
東京都港区高輪2丁目21番1号
THE LINKPILLAR 1 NORTH
URL
https://www.kddi.com/

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